クロエ・ジャオ監督「ノマドランド」2020年

filmarksに書きつけたものをほぼそのまま転載する。粗いし作品の描写をもっと引きださないとダメだ。まあとりあえずのもの。 「ノマド」と「ランド」とは相反するようにすら思える。この二つの語がつなげられたタイトルには、どのような意味があるのか。 ふ…

今年観た映画振り返り(2020)

今年から映画をちゃんと観ようと思って、とりあえず100本目標で結果116本。12月は修論忙しくて1本しか観れず...120本は観たかった。100本というのはかなり少ないのは分かっているのだが、なかなか難しい。学部生のときに沢山観ておくんだった。来年はもっと…

田中登監督「(秘)色情めす市場」1974<ネタバレあり>

凄い。黒沢清「CURE」の衝撃と同じくらいの衝撃をまた食らった。物語の筋は、まあなんということもないと言ってもいいかもしれないけれど、当時の大阪の、今で言ういわゆるディープ大阪の風景を、人々を、つぶさに写していることや、とりわけ圧巻のモンター…

Dos Monos動画&記事リンクまとめ(随時更新)

// Dos Monosいい。批評的・思想的でハイコンテクストなグループでもあるから、インタビューとかを読むとさらに楽しめる。なのでここに記事などをまとめておく。最終更新2021/10/18 ラジオ TOKYO BUG STORY https://block.fm/radios/728 2020/05/01~:https:…

ふくだももこ監督『おいしい家族』2019年

ふくだももこ監督のやさしい世界観。(悲しいかな)現在のマジョリティの感覚が、マイノリティに反転するという仕掛けの妙。これ、意識はそのままにマイノリティになっちゃったというのとは大違いで、マイノリティに対する偏見がない人たちがマジョリティに…

大森立嗣監督『MOTHER マザー』2020年

観たくない予告。観客をバカにしたような映画ばかり流れて、実際そういう映画が興行的に伸びるんだから困るけど。そうして大変なときにも足を運ぶような熱心な観客は少なくなってしまって、総じて興行収入は危機的。新作映画の伸びはよくない。そんなどんよ…

宮崎駿監督『もののけ姫』1997年

ベストムービー。ワンカットも無駄がない、凝縮された映像。言葉での説明も少なく画でみせる。映画館で観れて本当によかった。アシタカが村を出て下に出るまでのシーンの風景なんてもう贅沢。川のシーンの音も繊細に聴けるというんで映画館に行く価値がある…

ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ監督『その手に触れるまで』2019年

胸がつまるほど切実。主演のイディル・ベン・アッディが凄い。心を閉ざしてしまった少年の遠さ。宗教がいけないわけじゃなく、他者との共存を認めない、そして自分たちと違う他者を(物理的にまで)排除しようとする原理主義が問題なんだと分かる。農場で他者…

三島有紀子監督『Red』2020年

否定的意見なので、読みたくない人はすぐに引き返して。観てきたなかでワーストくらいに酷い作品でした。中身がなくて、表面的には綺麗な映像があり中には綺麗でよかったっていう人がいるかもしれないけれど、苛立つほどに空虚。象徴的シーンもあり、耽美に…

ミシェル・アザナヴィシウス監督『グッバイ・ゴダール!』2017年

ゴダールのこと語れるほどよく知らないので、この作品のテクストに限って言えば、芸術と政治の対立を描いたものとして観た。「68年5月」の挫折と、ゴダールと映画の関係を主題として、「映画か政治か」という二者択一にゴダールは苦しむことになる。ゴダール…

グレタ・ガーウィグ監督『ストーリー・オブ・マイライフ』2019年

もう今年(2020年)ベストと決めていいくらいの作品ではないか。今まさに映画にする意味のある原作であり、グレタ・ガーウィグその人が撮ったのもすごく頷ける主題。構図もカメラワークも素晴らしく決まっていて、最初のワンカットから息を呑む。セットの造…

アビー・コーン、マーク・シルヴァースタイン監督『アイ・フィール・プリティ!』2018年

おもしろいしポップだし映画としてよくできていないかと言えばそんなことはなくていい作品。凝ってるかといったらかなりシンプルなんだけど、メッセージ性とエンパワメントの効果を考えると、やはり良作。展開もかなり読めてしまう。けど、実際映画を観ると…

ラナ・ウィルソン監督『ミス・アメリカーナ』2020年

不正義への怒りが止まらなくなる高血圧映画。しかしテイラー・スウィフトが格好良く美しい。疑問もなくある意味普通の感覚で、カントリーソングの女王として輝かしい地位を築き、政治主張は敢えてしない方がいいと自然に決めていた頃から、カニエ・ウエスト…

アリス・ウー監督『ハーフ・オブ・イット』2020年

さすがのNetflixオリジナル。音楽もいいし、オシャレ。哲学・思想、フェミニズムの引用が出てきて、田舎に埋もれた才能が他者と交流していき化学反応が起こる。これはNetflix作品のトレンドな気がするし、どれもこれらの要素で高品質に仕上げてるの凄い。と…

ナンシー・マイヤーズ監督『マイ・インターン』2015年

時代を押し進める力強い作品。シンプルなストーリー・構図で、多少オーバーだったり派手な展開が悪目立ちした感がないでもないけれど、現実的だと思わせる説得力もあり演出がいいと思うところも多かった。特にテンポがゆっくりするシーンは胸に沁みる。しか…

マイク・ニューウェル監督『フェイク』1997年

潜入捜査官とマフィアの擬似親子関係。泣ける。アル・パチーノが弱くて少しどんくさく、全く強さを感じないんだけど、愛情を凄く感じる演技。潜入捜査官の辛さもヤバい。妻とのすれ違いに、家族を傷つけようとせずとも傷つけてしまう辛さ。そして自分の命も…

マーティン・スコセッシ監督『ギャング・オブ・ニューヨーク』2001年

デカプのちょっと小汚なくて野生み溢れる感じが、たまにカッコよくも見えるときがある。キャメロン・ディアス綺麗すぎる。アイルランド移民流入の歴史、移民が力で真の市民権・平等を勝ち取っていく過程が描かれる。アメリカ史って歴史的にも別に綺麗に語ら…

ジョン・アヴネット監督『ボーダー(RIGHTEOUS KILL)』2008年

やられた、見事な筋。『ヒート』の後に観たから余計に驚きが。敵同士だった二人、デ・ニーロ、パチーノが今度は信頼し合うバディに。ラストは涙を流すわけではないが、泣ける、胸に来た。物語の中心にあった犯罪者の連続殺人は、法という染み一つない正義を…

トッド・フィリップス監督『ジョーカー(JOKER)』2019年

filmarks(@decaultr)に感想書いているものが長くなっちゃって、ブログみたいだなと思ったので転載していこうと思う。差し当たりそのまま載せるけど、興が乗れば書き足して自由にもっと長く書くことになるかも。まずは『ジョーカー』。 ポピュラー映画とし…

太宰治『人間失格』初出1948年

本当におもしろい小説。自分の経験に、これほど酒、金、女によって身を滅ぼしたことはないが、この自意識の強さに共感してしまう。 徹底して他者からどう見られるかで自己を形成し、またトラウマからか、人間を信じられず当たり障りのないよう逃げるようにし…

山戸結希監督ほか『21世紀の女の子』2019年

Ⅰ はじめに 「女の子よカメラを持とう×TAMA CINEMA FORUM 21世紀の女の子」TAMA映画フォーラム特別上映会(2019年8月24日)@多摩市立永山公民会館に行ってきた。見逃していて観たいと思っていたので、とても嬉しかった。しかもトークもあるという…

高坂希太郎監督『若おかみは小学生!』2018年

講談社の青い鳥文庫から全20巻で出ている、令丈ヒロ子『若おかみは小学生!』(2003-13年)が原作。漫画も全7巻で出ていて、今年の春夏でアニメ化されたところ。 原作読んでなかったのも、アニメ見逃してたのも悔しくなった...めっちゃええの ワンカット、ワ…

サミュエル・ジュイ監督『負け犬の美学(原題:SPARRING)』(2018年)

新宿で、ハリー・クレフェン監督『エンジェル、見えない恋人(原題:Mon Ange)』(2018年)を観た後に、ハシゴして観に行った。 『エンジェル』はすごく抽象的な映画で、登場人物のストーリーがほとんどない。社会からも隔絶されている。生活感というものが…

長尾龍一『リヴァイアサン』(講談社学術文庫、1994年)

著者の30年以上にわたる、ホッブズ、ケルゼン、シュミットの3人の国家論を基軸とした国家史の再構成の試みがわかりやすくまとめられた、国家論史研究の書。具体的には、国家批判の書だとされ、特に「近代主権国家による世界分断の批判」が中心主題となってい…