ラナ・ウィルソン監督『ミス・アメリカーナ』2020年

不正義への怒りが止まらなくなる高血圧映画。しかしテイラー・スウィフトが格好良く美しい。疑問もなくある意味普通の感覚で、カントリーソングの女王として輝かしい地位を築き、政治主張は敢えてしない方がいいと自然に決めていた頃から、カニエ・ウエスト(口が汚くて申し訳ないがコイツは本当にゴミ...)の心無い侮辱に傷つき、衆目の的となりマスの誹謗中傷を受け、一度は表舞台から去る。再起し、裁判を経て力強く、しかし深く傷を負いながら、輝きを増し、新たな魅力を得たテイラー・スウィフトに、心動かされない人がいるんだろうか。
被害当事者になって、差別に向き合い、変革を求め力強く行動するという点でジェイ・ローチ監督『スキャンダル』に似た構造があったと思う。テネシー州選の共和党女性候補が女トランプと言われたように、女性を分断統治するような、しかもそれが通用するような社会の常識・環境が根強いのが困難な課題だ。しかし、テイラーの"Only the young"は希望を与えてくれる。only the young can run.変えていくことができるはずである。