三島有紀子監督『Red』2020年

否定的意見なので、読みたくない人はすぐに引き返して。

観てきたなかでワーストくらいに酷い作品でした。中身がなくて、表面的には綺麗な映像があり中には綺麗でよかったっていう人がいるかもしれないけれど、苛立つほどに空虚。
象徴的シーンもあり、耽美に描こうという意図も感じるけど、頭でっかちに作っている印象。
フェミニズム描いとけばいいでしょって感じなのか、雑すぎませんかね。原作からそうなのかしらないけど、塔子の夫家族みたいなのリアリティに欠けるし、こう戯画的に描くならそれなりに立体性をもたせるために工夫すべきじゃないか。
キャラクターが皆死んでいて、全然肉体がない。あるのは設定だけ。かろうじて、柄本佑余貴美子の演技が役を生かしているくらい。完全に演者の力ですね。
見せ所の赤い布切れってどこから出てきた?見逃したのかもしれないけど、キーアイテムになってたわけでもなく唐突に感じた。またラストシーンは朝焼けで、それまでのトンネルの赤(オレンジ)から太陽のそれに移り、青に向かって行くんだが、赤→青がサイクルになっちゃって循環するのはいいのか?敢えてなのか分からないけど。
あと、鞍田との最後の濡れ場、夫と鞍田が対照されてきて、「最後に抱いてくれ」って言ったところで、おおと少し思ったが、結局腰振ってるの鞍田で「お前が抱くんかい」と幻滅した。どこまでも塔子が受け身で、フェミニズムっぽい要素を入れつつも成功していない、あるいは物語のなかでは敢えて失敗させたのかもしれないが。個人的には最後までガックシきた。

必ずしも大規模の商業的作品ではないと思うし、芸術性を求める方向だと思うのに、お茶の間ドラマ的な演出の過剰や過度なキャラクターに違和感があった。音楽は押さえ目で見せ場で印象的に使っていたのに、それ以外がうーんていう感じ。
映像としては美しいところも多かったと思うので、いい主題ときちんとした問題意識ーー心から撮りたいものを撮るーーがあればいい映画が観れそうな気はする。
いや偉そうに文句言って何様って感じではあるんだけど、なんか期待とのギャップがありすぎて苛々して書いてしまった。大衆娯楽映画ならそのつもりで観るし、アイドル出しときゃいいだろ映画(アイドルが出ている映画を批判しているのではない、念のため)は観ないし映画と思ってないし、文句はない。なんか中途半端さを感じて無性に怒りが。いい邦画が観たい。